新世紀のディバイソンの事

前々回のコラム(旋回砲の事)と前回のコラム(ゴジュラスの旋回砲)で、旋回式の砲について書いた。
この話題を掘り下げた事によって、あるゾイドに関する事も思いついた。

この二つのコラムを書いていて、長年の疑問だった事が解消しそうだと思った。
それはディバイソンについて。


ディバイソンというゾイドについて振り返ってみよう。
対デスザウラー用ゾイドとして登場した。
「あのデスザウラーに短期間の内に対抗する」というかなり無茶な要求に強引に応えたゾイド。
パワフルに突撃して17門突撃砲を見舞う。

とにかく突撃。強力だがかなり不器用な仕様だと思う。
なにしろほとんどの武装が正面を向いている。
正面は角・17門突撃砲・4連バズーカ・ミサイルポッド・衝撃砲と超強力なのだが、それ以外の面への供えが極めて薄い。

そんなディバイソンは対デスザウラー戦において奮闘して何とか戦線を保った。
マッドサンダー登場まで共和国軍が戦線を保ったのは本機のおかげと言える。

だが、暗黒大陸での戦いでは一転して活躍できなかった。
登場数が極端に減り復権しないまま終わった。中央大陸戦争時代、あれだけの数を誇ったのに。

暗黒軍との戦いが始まった最初の頃、デッド・ボーダーにしこたまやられている。これを機に、極端に出番が減った。
これ以降でまとまった数の運用が見られたのは、ギル・ベイダーが中央大陸を襲撃した際に防衛部隊として出動したシーン位のものだ。

中央大陸の防衛部隊。
もはや一線機というより予備役と言った方が良いほどの扱いだった。
この他に改造タイプ「ディバイソンコブラ」が登場した事もあるが、これもまた中央大陸に置かれていた(中央大陸から接近するギル・ベイダーにミサイルを放った)。

そういえば、暗黒軍のゾイドはディバイソンへの対策が完璧だ。
ディバイソンの突撃は強力だが軌道は単純で読みやすい。
それでも、デスザウラーは有効な迎撃が難しい。
荷電粒子砲を撃つような相手ではないし(また撃とうとしても間に合わない)、かといって他の小型火器では止められない。
ディバイソンは重装甲なのだ。だからデスザウラーは腕で止めるしかない。それはもう一か八かだ。

同じ事はアイアンコングにも言える。コングの場合は6連発ミサイルを腕に持ちかえれば有効な迎撃ができるかもしれない。
だが対ゴジュラス戦を思いだされたい。
250機と150機で戦ったあの一戦。あそこで「コングが接近戦に向けてミサイルを手に持ちかえるその隙にゴジュラスが襲い掛かった」という事があった。
ここから考えると、6連発ミサイルを肩から腕に持ち帰るには少し時間がかかる。全力で突撃するディバイソンを発見してから持ち替えようとしても間に合わないのだろう。
だからディバイソンは突撃を成功させる事ができた。強かったと思う。
(ただしバックパックを持ったMK-IIに対しては分が悪かったようでもある。バックパックで運動性が上がったMK-IIは突撃を上手くかわすのだろう)

一方、暗黒ゾイド。
デッド・ボーダーやダーク・ホーンは突撃するディバイソンを強力な砲でカウンターにする。
ジーク・ドーベルやガル・タイガーは高速機なので突撃がそもそも当たらない。
そんな中で、もはやディバイソンは使い物にならない。よって中央大陸防衛の予備役になったと思う。

 

さてそんなディバイソン。グランドカタストロフ後もそこそこの数が残っていたようだ。

グランドカタストロフ…彗星衝突。これにより多くのゾイドが数を減らし、あるいは絶滅した。
デスザウラーもギル・ベイダーもガン・ギャラドもデッド・ボーダーもジーク・ドーベルも居なくなった。
天敵と言えるゾイドの多くが減った。
なのでディバイソンは強力機と言って良い地位に回復したと思う。

長年の疑問というのはここ。
ZAC2099年に開戦した西方大陸戦争では当初は共和国軍はゴジュラス、ゴルドス、シールドライガーで戦った。
少し遅れてからようやくディバイソンを派遣している。
私はディバイソンの派遣を見た時に「最初から派遣しろよ・・・」と思ったのであった。
なぜならゴジュラスが激減している状況。数の少ないゴジュラスに任せるよりも比較的数に余裕があるディバイソンをなぜ派遣しなかったか。
ディバイソンこそ主力運用すべきじゃなかったのか。と、そう思っていた。

さて、以下がこれに対する見解として思いついた事。

それはもう、派遣した所で活躍できないと分かっていたからなのかもしれない。
なぜなら主力運用するにはディバイソンはあまりにも不器用だからだ。

17連突撃砲は射程が中距離以下なので火力支援に使う事はできない。
火力支援はゴルドスに任せた方が良い。射程・命中精度ともにゴルドスが勝る。

ディバイソンは頑丈でパワーがあるのでゴジュラスキャノンを搭載する事はできる。

この仕様ならば火力支援での運用も可能だと思う。
いやしかし、ゴジュラスキャノンを積む事はゴルドスでも可能であった。

レーダーがあり命中率が良いゴルドスに積んだ方が明らかに高い成果が出せる。
ゴルドスが居る限り、ディバイソンは火力支援よりも最前線での直接戦闘で運用した方が良いのは明らか。

では直接戦闘で運用したらどうなるか。
戦場の主力はセイバータイガーやアイアンコングではなく、イグアンやモルガ。数の多い主力歩兵ゾイドだ。
大型ゾイドは敵主力歩兵…小型ゾイド効率よく排除する事が求められる。

レッドホーンは緒戦で最も高い戦果を挙げたとされる。これはレッドホーンが敵主力歩兵ゾイド(ゴドスやガイサック)を排除するのに最高の仕様だからだ。

敵歩兵ゾイドの攻撃に耐える防御力。敵歩兵ゾイドを排除できる砲撃力。しかも砲は多く旋回式のものが多いので極めて効率良く排除できる。
レッドホーンは対歩兵ゾイド用として最高の能力を持つ。

さて敵歩兵ゾイドの排除能力を言うとディバイソンは絶望的だ。
前方は良い。だがそれ以外から来られると…。
歩兵ゾイドは全周囲からにじみ寄る。多方向から攻められるとディバイソンは対処できない。
もちろん防御力は高いのでそうそうやられる事はない…が、敵の排除ができない=いつまでも撃たれ続けるのだから、いつしかダメージが蓄積してやられるだろう。

突撃機でもレッドホーン、エレファンダー、マッドサンダーは旋回砲があるから、包囲されても旋回砲で効率よく敵を排除する事ができる。
だから生還できる。
でもディバイソンは前しか排除できないので極めて危うい。
これは対デスザウラー用として「突貫」で作られたから汎用性がないのだろう。

包囲された場面を想定するなら、ゴジュラスはまだいい。腕や尾に砲を多く持つから多方向に撃つ事ができる。
これらは小口径だがイグアンやモルガには有効だろう。
対小型ゾイド戦能力ではレッドホーンに及ばないが、ディバイソンよりは有効に使える。

 

対歩兵ゾイドとの戦い。この危うさは中央大陸戦争時代にはどうだったのだろう。
やはり同じであっただろう。
だが少なくともディバイソンは中央大陸戦争時代には十分に活躍している。
なぜか。

それはアロザウラーだと思う。
ディバイソンとアロザウラーの就役時期はほぼ同じ。共和国軍は一気に主力歩兵をゴドスからアロザウラーに更新した。
これによってイグアンとハンマーロックに苦戦していた状況から一転、アロザウラーは両機を圧倒してみせた。

メカ生体ゾイドでは「ディバイソン突撃隊」なる部隊の内訳が紹介されている。
これは「ディバイソン6機、アロザウラー30機、ゴドス15機、ベアファイター15機」で構成されていたとの事。
単純にディバイソン1に対してアロザウラー5、ゴドス2.5、ベアファイター2.5が共に行動していた計算になる。

アロザウラーを中心とした新世代の歩兵(補助として旧世代のゴドス)が随伴して弱点をカバーする。
これらがイグアンやハマーロックを防ぐから、ディバイソンは「正面のみ」の攻撃でも不足なく運用できたのだと思う。

 

では新世紀はどうだったかというと、アロザウラーは激減して主力歩兵としての運用ができなかった。
ベアファイターは明確な記述はないものの、画面に映った回数が極めて少なかったので少数だったと思う。
主力はゴドスであった。
ゴドスではイグアンに苦戦する。これではディバイソンの弱点を十分にカバーできない。
従って運用できないという結論に達したと思う。

この事から、この時代においても中央大陸の防衛という予備役のような状況に置かれていたのだと思う。

そんなディバイソンだが後に増援として西方大陸に派遣された。何故か。
これはイグアンを超える理想的な主力歩兵が誕生したからだと思う。
それはガンスナイパー。

アロザウラーはこの時期まだ復活の目処が立っていなかった。
だがガンスナイパーがディバイソンの護衛に付けば、弱点をカバーしまさに理想的に動けるだろう。
イグアンは当然として、新世代の敵主力歩兵ゾイドのレブラプターにも優位を示す。
これによってディバイソンは再び活躍できる目処が立った。

またオリンポス山での戦いを経て、帝国軍がデスザウラーの復活を実現可能レベルで計画している事を知った影響も強いだろう。
共和国軍は急遽としてマッドサンダーの再配備を計画したと思う。
だがマッドサンダーは野生体の事情(生き残りが幼体のみだったのでまだ十分に育っていない)から配備はまだ先になりそうだった。
そこで旧大戦時と同じく応急的な対抗機としてディバイソンをたてる計画が並行して行われた。
ただし対デスザウラー用という計画は、帝国軍がデスザウラーを復活させたのがかなり後になってからだったので実現しなかったのだが…。

 

西方大陸に送られたディバイソンは目立つ戦果を挙げる事はなかった。
ネオタートルシップ甲板上で他機との共同でシンカーを撃墜したことがハイライトだったと思える程に。
見えない所ではガンスナイパーに護衛されながら活躍したと思う。
ただ活躍できなかった理由として、この時期の敵大型ゾイドは旧大戦の大陸間戦争時と同じくディバイソン対策を取り入れていた。
この影響は極めて強いと思う。

 

この時代の帝国大型ゾイドとの交戦を予想。
レッドホーンには勝てるだろう。汎用性は劣っているが直接戦えばディバイソンが優位だ。
だがBGだと苦戦しそうでもある。
ビームガトリングはハイブリットバルカンよりは弱いと思うが…、実際どの程度の威力だろう。
ディバイソンが突撃した。それを察知したレッドホーンBGが全力でビームガトリングを放つ。
なにしろディバイソンの突撃は一直線だからほぼ全弾当たる。
この状況を想像すると、ディバイソンが耐えて体当たりをする(勝利)のが先か、撃ちまくられて屈する(敗北)のが先か…。

セイバータイガーと戦えば互角程度だろうか。旧大戦時の”サーベル”タイガーだったら勝てた。同機は最高速度200km/hだったので勝てた。
しかし”セイバー”タイガーはグレートサーベル並に強化された仕様。もはやディバイソンでは動きに追従できない。
ただしセイバータイガーの武装ではディバイソンを破壊する事も難しい。逆にセイバータイガーの装甲ではディバイソンの攻撃が致命傷になる。
セイバータイガーは高い運動性で翻弄できるが決定威力がない。ディバイソンは動きについていけないが防御力と攻撃力は高い。
総合的に互角程度だと思う。
セイバータイガーATなら更に動きが良くなる上に8連ミサイルポッドの高い攻撃力があるのでディバイソンが勝つ事は難しいだろう。
動きの良さで翻弄しつつ8連ミサイルポッドで的確にダメージを与える。
ダメージが蓄積し動きが鈍ったところで仕上げのストライククローないしキラーサーベルでトドメを。

アイアンコングはノーマルタイプなら互角、マニューバラスターを付けたMSだと勝てない程度だろうか。
ここは旧大戦時の戦力比(バトスト3巻戦力比較表)をほぼそのまま流用して良いと思う。

ジェノザウラーとは絶対に戦ってはいけないと思う。
そもそもジェノザウラーの動きについていけないし、旋回式の強力砲を持つジェノザウラーには勝つ術がないと思う。

余談だがゴジュラスとジェノザウラーはあんがいいい勝負をすると思う。
ディバイソンの装甲は強いがパルスレーザーライフルを撃ちまくればいつか撃ち抜けると思う。
正面に行かないようにすれば基本的にダメージを受けないのも戦いやすい。
強力な砲を持ち速度と運動性で上回るジェノザウラーは常に側面を取りながら戦う事ができる。
楽に勝てると思う。

だが、とにかく頑丈で生命力の高いゴジュラスはパルスレーザーライフルでは完全沈黙させる事は難しいと思う。
なにしろエルガイル海岸での戦いにおいてゴジュラスは荷電粒子砲にさえ耐えた。
ゴジュラスの頑丈さ・しぶとさは凄まじい。
完全沈黙させるには、ダメージを蓄積させた後に格闘戦で直接破壊する必要があると思う。
だがそうなればゴジュラス側にも勝機がある。パワーでは上回る。意地を見せひねり潰してしまうかもしれない。

エルガイル海岸でジェノザウラーとゴジュラスは戦った。この一戦を思い出して欲しい。
ジェノザウラーは荷電粒子砲でダメージを与えたが、トドメをさすのはレブラプターの群れに任せた。
これはあんがい、ジェノザウラーがゴジュラスと戦うのは危険として回避したのかもしれない。
あの戦いを見ると、レブラプターの群れは勝利はしたものの何機かは確実に破壊されている。
ゾイドもパイロットも出来るだけ損失したくないだろう。ジェノザウラーが確実に勝てるならそうしたと思う。
なのにそうしなかったのは、ジェノザウラーは絶対に損失させるわけにはいかない。ゴジュラスと戦えばそうなる可能性があるから、ある程度の損失は確実に出るがレブラプターの群れに任せようという判断になったのかもしれない。
なんだかんだいってやっぱりゴジュラスは強い。

 

さてディバイソンに話を戻す。
そんなわけでディバイソンは不器用さが出てしまいあまり活躍ができなかったのだと思う。
理想的な支援機を付け、群がる敵主力歩兵ゾイドを排除する事ができた。
さぁあとは大型ゾイドを倒せばしまいだ。やってしまえディバイソン。
だが敵大型ゾイドは徹底したディバイソン対策を採っていた。なので思った程の活躍ができなかったのであった…。

ただ伸びしろはあると思う。
なにしろパワーがある。だからいっそ17門突撃砲を撤去し、同位置に旋回式の砲塔を付ければ随分と汎用性が増すと思う。
ちょうどカノンフォートのような形で。

ゴジュラスキャノンさえ積める余裕があるのだから、17連突撃砲はそのまま残しつつ、パルスレーザーライフルと同程度の大きさの旋回砲を増設しても良いだろう。
こうすれば汎用性は大いに増すと思う。

そうしたタイプが実現しなかったのは、共和国軍が復興を優先して軍事費を最低限に留めたからだろう。
共和国軍のゾイドは旧大戦時よりも強化されたものが多い。シールドライガーもゴジュラスも強化されている。だが所詮は「ある程度」の向上だったと思う。
帝国軍のセイバータイガーのように劇的に向上し「もはや別機」という程の改修がされた機はなかった。

セイバータイガーもそうだが、私はアイアンコングも大きく向上していると思う。これはキット的に言うとバッテリーボックスが変化しているからという理由だが…。
帝国側の強化を見ると、共和国側の向上はささやかなレベルに留まる。
軍備にもう少しだけでも予算をかけていれば、汎用性を得て理想的に強化されたディバイソンが完成し主力に抜擢されていたかもしれない…。

またifの話だが、共和国軍が早期にアロザウラーを復活するかガンスナイパーの開発に成功して開戦時に間に合わせていれば…、これらがイグアンやモルガを徹底的に排除しその結果としてディバイソンが大活躍していたかもしれない。
ジェノザウラーの登場は本当に痛かったと思う。ライトニングサイクスもマズい。これらのゾイドが登場するより前に投入されていれば…。
活躍の可能性は大いにあったと思う。
なんとも惜しい話だ。

一方で、その不器用さがディバイソンらしさのような気もするのでこれはこれで良いような気もする。

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