旋回砲の事

今回は「旋回式の砲」について。

ゾイドはとてもリアルだと思う。ただ砲が旋回できない事だけはどうかなーと思っていた。
多くのゾイドの砲は「正面に固定」して付いている。
仰角がとれるものは多いが、砲の旋回はできないものが多い。


砲撃といえばこのゾイド、ウルトラザウルスも前方固定式の砲だ。

戦艦や戦車の主砲は旋回する。なのにゾイドはなぜ? という事は子供の頃からの疑問だった。
砲が旋回すればこそ、戦艦は敵艦を正確に狙える。正面にしか撃てないウルトラザウルスは敵を正確に狙えるのだろうか。

さて大人になって、これに対して小回りの問題があると思うようになった。
ウルトラザウルスは36cm砲を持っているので、同じく36cm砲を搭載した戦艦金剛と比較してみよう。

金剛の艦自体を旋回させるのに必要な直径は下の通り。(戦闘速度を出している想定)

船体よりもかなり長い直径が必要。これだけの距離を要してようやく一回転できる。

艦の運動性は旋回性と追従性が重要だ。
旋回性は上の図の通り、どれだけの直径で旋回できるかだ。

追従性とは、舵をきってから実際に艦がその動きをするまでにかかるタイムラグの事を指す。
艦は舵を切った瞬間に動くわけじゃなく、少ししてから動き始める。

金剛の追従性は手持ち資料に記述がないので不明…なのだが、一般的に追従性は巨艦になるほど悪くなる。
戦艦大和は100秒近くかかったそうだ。舵を切って100秒たってようやく動くのだ。

アニメ的な描写に親しんでいると、「敵が魚雷を投下した→やばい、舵を切ってかわすんだ」的なシーンを思い浮かべると思う。
しかし実際はそんなのでは全く間に合わないので、敵が攻撃進路に入った時点で舵を切ってようやくギリギリ間に合うかどうかというものなのである。
爆弾にしても同じで、投下されてから舵を切ったのでは全く間に合わない。敵が攻撃進路に入った時点で投下位置を予想しかわす必要がある。

金剛は大和より小さい。なので追従性はいくらかマシだと思うが、あくまでマシという程度で瞬時に動くものではない。
船とはそういうものなのだ。
例えるなら、数秒の操作遅延が発生するゲームパッドを使って格闘ゲームをするようなものと言えば分かりやすいだろうか。
操舵は大変なのだ。

さて巨艦は艦自体が一回転しようとすると時間もかかるし長い距離も必要だ。
一方、ウルトラザウルスどうだろう。 旋回性と追従性に関して言えば素晴らしい性能を発揮すると思う。
多分、その場で旋回できる。尻尾や脚を上手く使って旋回半径0mでの旋回ができるだろう。
追従性に関しても、タイムラグは極わずかだと思う。
生物なので動こうと思った瞬間に動けるだろうし、いかにウルトラザウルスが巨大といっても戦艦に比べれば小さい。
運動性は最高だ。
このように高い運動性能があるので、あえて主砲を旋回式にせず前方固定式にしたのだと思う。

同じ大きさの母体に旋回式の砲あるいは固定式の砲を積むのなら、後者の方が大きな強力砲を選ぶ事ができる。
旋回式の砲は機構が大掛かりになる=重くなるので仕方がない。
多くのゾイドは母体が持つ高い運動性に期待して「旋回は母体ごと」という考えをしているのだと思った。
母体が素早い旋回をするのだから、砲は正面固定式で強力な砲が良いという考えだ。

 

…と、ここまでは今まで考えていた事。
そしてここからは、今回新しく思いついた説を書きたい。

 

基本的にゾイドの砲の考えは上記した通りで正解だと思う。
戦艦や戦車に比べて運動性が高い。だから自身ごと旋回すれば良い(その分大きくて強力な砲を積もう)という考えに基づいている。
しかし一方で、旋回式の砲を持つゾイドも存在する。代表的なのはレッドホーンとマッドサンダーだろう。

これらの機種を見て、なるほどと気付いた。

前方固定式の巨砲を持つゾイド…ウルトラザウルスは陸上での任務は後方支援だ。
バトストだと至近距離で戦うシーンもあるので勘違いしそうになるが、基本的にウルトラザウルスは後方から砲や旗艦能力で味方を支援する事に真価がある。
「後方」がキーワードだ。つまり前に向けて撃っていれば良い。

図にするとこの通り。

対して、レッドホーンやマッドサンダーは重装甲と角の威力を活かして真っ先に敵陣に突撃する。

図にするとこの通り。
「突撃後は敵陣の中に留まり、後続の味方部隊が到着するまでその場で耐える」ような運用も多かったと思う。

両機とも旗艦機能を持つ。
「現場にいち早く突入する機がその場の情報を後続部隊に伝える。これによりその後の戦闘が有利に進む」という運用は極めて重要だったと思う。

敵陣に留まり、後続の味方部隊が到着するまで耐え続ける。これは大変な事だ。
四方八方から猛攻撃を喰らうだろう。
「だからこそ全周囲に撃てる砲が必要だった」
のではないだろうか。


このように全周囲に砲を撃ちまくり、味方部隊が到着するまでにできるだけ多くの敵を排除し自身を守る。

レッドホーンの砲はゴルドス以下には十分な威力を発揮する。小型ゾイドなら一撃でスクラップにできるだろう。
防御力も、ゴジュラスが出てこない限りにおいては十分だ。
マッドサンダーは言うまでもない。

 

私は、基本的にゾイドの砲は前方固定式であると思う。それはゾイド自身の運動性の高さゆえだ。
しかし一部の「先陣を切って敵陣に突っ込む」ような「四方八方から撃たれる」事を想定した機に関してだけは違う。
これらはその任務から全周囲に向けて撃つ旋回式の砲が用意されているのだと思った。

この考えにおいて言うと、ディバイソンやガンブラスターにも触れなければならないと思う。
どちらも先陣を切って敵に突っ込むイメージのゾイドだ。特に、ディバイソンはまさに先陣だ。

これらの機は前方固定式の砲しかない。
いやしかし、ディバイソンは対デスザウラー用として苦しい中で開発されたという事情がある。
とにかくデスザウラーだけを倒せれば良いという、それのみを最優先した結果がこの仕様なのだと思う。

ガンブラスターも、未知の暗黒軍を倒すべく少しでも強力な砲を搭載する・しかも逼迫する戦況は十分な開発期間を許さないという中で登場した。
そこであのような偏った仕様になったと思う。

他のゾイドを見ると、ブラックライモスは旋回式の砲を持つべきだったと思う。

小型レッドホーンとも称される。運用は先陣を切って敵に突っ込む事。
ただブラックライモスは所詮は中型。搭載できる砲の大きさには限界がある。旋回式の砲にすれば小型砲になってしまう。
それでは十分な攻撃力に達しない。
その苦しい事情から前方固定にしたのかもしれない。

レッドホーンの後継機的なゾイドと言えばエレファンダーも忘れてはならない。
こちらは旋回式の砲を持っていて、同じ運用ができる能力を持つ。
本機の旋回式の砲は、迫りくる共和国大部隊を迎撃したニクシーでの時間稼ぎにおいても大活躍しただろう。
敵陣への突撃ではなく防衛で使われたのは皮肉だったが…。

あとは、ジェノザウラーのパルスレーザーライフルだろうか。

本機は想定する敵が素早いシールドライガーだった。これが旋回砲を装備した理由の一つだと思う。
シールドライガーがこちらの突撃をかわした場合でも、旋回式の砲で狙えば良い。
あるいは旋回砲を撃って敵の行動を制限し、その上で突撃・破壊する。そんな使い方もできる。

また、先陣を切って敵部隊に突撃する任務もある程度は想定していると思う。
ただし、レッドホーンやマッドサンダーの戦法とは違う。
圧倒的な速度(本機はマーダのようなホバーさえ可能だ)で敵陣に潜入し、自在に動くパルスレーザーライフルを全周囲に乱射、スピーディーにできるだけ多くの敵を葬った後に速やかに離脱する戦法をすると思う。

超スピードでこのような軌道を描きつつ敵部隊内を駆け抜ける。
こうすればある程度の敵を排除できるし敵を大混乱させる事ができるだろう。

レッドホーンやマッドサンダーの防御力にものをいわせ「ジックリ迫りドッシリ耐える」戦法ではなく、全てスピーディーに行うもの。
一撃離脱戦法的な運用だ。

これと同様の事はシールドライガーやセイバータイガーでも可能だと思う。ただ、両機の砲は小さいので効果としてはジェノザウラーに比すれば大きく劣る。
ジェノザウラーは正面の敵を爪や牙で破壊しつつ・周囲の敵はパルスレーザーライフルで破壊できる。
シールドやセイバーは背中の砲の威力で劣るので、主に爪や牙で正面の敵のみを排除し離脱する事になるだろう。
これでは破壊できる敵の数も少ない。
こうして見ると、ジェノザウラーの傑作ぶりが改めて思われる。

 

そんなわけで、今回は前方固定砲と旋回砲を考えてみた。
それを持っているゾイドにも傾向が見えてくるのが実に面白い。

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