ゾイドの重さを更に考える

重量級ゾイドの重さのコラムにて、「そもそもで言うとゾイドは驚異的に軽い」と書いた。
これに対して「おそらく、ゾイドはマグネッサーシステムで常時「体を持ち上げる」ような効果が出ているのだと思う。それゆえにこの重量なのだろう」と書いた。
今回はこの点についてもう少し掘り下げたい。

私は、ゾイドはマグネッサーシステムがあるから軽いのだと思う。
だが、他にもこんな説は考えられないだろうか。

 

■重力が異なっている説■
ゾイド星(惑星Zi)では重力が低い。ゆえにゾイドも軽い。こう考えればゾイドの軽さは説明できる。
しかし、これは個人的には懐疑的だ。
実のところ、こんな資料はある。


極初期の資料で、「SFホビー大カタログ」という雑誌に掲載されたものだ。

これは、「ゾイド星に不時着したグローバリーIIIの乗組員が星を調査する中で記した最初の調査報告書」というようなていで書かれた文章。
重力が0.6Gとされている。

が、地球人が問題なく行動できている事からゾイド星は地球と同じ1Gだと思う。
じゃあ上記資料は何だという事にもなる。これは星が磁気嵐が吹くような環境が激しい場所なので、「重力が変わる極地」が存在するのだと思った。
地球でも南極と赤道付近を比べるとわずかに重力が違う。ゾイド星はその環境ゆえに重力バランスが大きく変わる極地が存在していてもおかしくはない。
最初の観測地点がたまたまその辺だったのだろう。

重力が違う極致もある。だが全体としては1Gである。
この場合、後半に書かれている「0.6Gだと大気が維持できるかが疑問だがこれは後の調査を待ちたい」も解決すると思う。

 

■tという単位が異なる説■
地球とゾイド星では1tという重さの基準が違う可能性もある……が、これも懐疑的だ。
というのも「メートル」については地球と同じ基準が採用されている。
単位は一律に地球基準になっていると思う。

 

さて、重量に関して新しい疑問を出す。実は、「軽い」以外にも大きな謎がある。
それは、大型化してもさほど重量が増えない事だ。

10mの機体が20mになったら「長さは二倍」だが、重量は体積に依存するら2倍よりももっと重くなる。

似たようなシルエットのゾイドを例に出そう。
全長10.73mのゲルダーは25t
全長20.8mのレッドホーンは94t
全長41.8mのマッドサンダーは585t
一見すると順当に増えている気もするが、よくよく考えるとおかしい。

重量は体積で求める必要がある。
例えば下のブロックがゲルダーと同じ25tとする。

ブロックをの一辺を2倍にすると…、

この通り。体積比は8倍になる。すなわち200t。

体積比は3乗で求める事ができる。
2倍になれば体積は8倍に、3倍になれば体積は27倍に、4倍になれば体積は64倍になる。

これは3倍の図。675tと計算できる。

ゲルダーは10.73m、レッドホーンは20.8m。
おおむね二倍と言って良いだろう。
体積比で言うと8倍。本来ならば25t×8=200tほどである筈だ。

マッドサンダーは41.8m。
ゲルダーの4倍もあるが、角の長さがかなりを占めるので本体で言うと3.5倍程度だろう。
その計算をすると、1072tほどと計算できる。

むろん、これは参考値程度である。実際は全く同じ形状ではないので誤差は生じるだろう。
ただ、ゲルダーよりレッドホーンは装甲が厚いし搭載する火器も大型だ。なので、むしろ200tより重くなる筈だ。
マッドサンダーに至っては、装甲の厚さや反荷電粒子シールド等の搭載で過度に重くなる筈だ。
それなのに92tや585tに収まっているので、これはとても軽いなあと思えるわけだ。

形状・搭載武器・装甲の違い等を加味すれば、ゲルダー25tに対してレッドホーンは250t、マッドサンダーは1500tくらいが妥当だろうか。
しかし、そうはなっておらず92tや585tに収まっている。

「マグネッサーシステムで常時”体を浮かす”ような効果が出ている。しかも大型ゾイドの方がその力が強い。それゆえこのようになっている」
のではないだろうか。

 

地球では一時期「多砲塔戦車」という概念が生まれ、そして一瞬で消えた事があった。
これは、名の通り多くの砲塔を積んだ戦車だ。
通常の戦車は主砲を一方向にしか撃てない。横から敵が来れば砲塔を回してそちらを向く必要がある。
それは弱点になってしまう。
だから砲塔をたくさん付けて前後左右すべてに撃てるようにして死角をなくす。そんな意図があった。
「強い戦車にいっぱい砲塔を積んだらもっと強くなる!」というロマンにあふれる兵器だ。


これはイギリス軍が開発した多砲塔戦車「インディペンデント」
砲塔が5つもある。たいへん強そうだし最高にカッコいい。

こんなに強そうな多砲塔戦車がなぜ消えたかと言うと、実際に実現しようとするとアンバランスになったからだ。
砲塔を多く積むという事は大型化が避けられない。
大型化すると重量が増えるので機動力が低下する。デカくてノロい。それはもう狙い撃ちされるだけだった。

機動力を確保するなら重量を軽減するしかない。重量を軽減するには砲塔を減らすか装甲を削るしかない。
「多砲塔戦車」なんだから砲塔を外す選択肢は採用できない。
ならば、もはや通常の戦車よりもペラい紙のような装甲にならざるを得ない。

大出力エンジンを積めば? というのもなかなか難しい。
そもそも戦車というのは陸上兵器としては最大級に重い。
必然的にその時代において確保できる最高のエンジンが登載されているので、もっと重い戦車が出たから倍の出力のエンジンを付けようとはできないのだ。

こうして(この他にも多くの問題があるのだが今回は略する)、多砲塔戦車は消えていったのであった。

 

さてゾイド。今回このように考えていると「多砲塔戦車を実現できる世界」なのかなと思った。
「ゾイドにはマグネッサーシステムなどで常時”体を浮かす”ような効果があり、しかも大型ゾイドの方がその力が強い」とすれば、重さの問題がクリアできる。
十分な装甲やもっと大きくて強い火器を搭載する事ができる。
出力に関しても「ゾイドのエネルギーに依存する」「大型ゾイドは総エネルギー量が多い」わけだから十分なものが常に得られる。
有効な多砲塔戦車が実現できるわけだ。

レッドホーンを見ていると、まさに多砲塔戦車だ。
ゾイドはロマンにあふれる。武器を満載したし姿は最高に痺れる。
多砲塔戦車が再現できたのは、重量に秘密があったのかもしれない。

 

重量の設定が、ここまで厳密に考えられているのかは分からない。
正直、「何となくこれ位かな」というノリで設定されているのかもしれない。
いやしかし、前回のコラム(電子戦機の重さ)を見ると、重さの傾向はあんがい厳密にしっかりと組まれているようにも思える。

スペックの中では「速度」はとても注目されやすい。比べると、重量は正直そこまで注目されない地味な要素だと思う。
が、そこに注目すると色々なものが見えてくると思った。

Back
index

inserted by FC2 system