デッド・ボーダー初号機

暗黒大陸は北の果てにある未知の大陸で、得らる情報は極めて少ない。ただ一つ確かなのは、環境は極めて厳しく、中央大陸のそれとは比べ物にならないという事だ。

そこは、中央大陸から見れば、恐ろしい者が住む魔の地として映った。
そしてそこに在る軍「暗黒軍」も、尋常ならざる兵器を使う恐怖の軍というイメージを持つ。

恐怖の暗黒軍のイメージを植えつけたゾイドと言えば、やはりデッド・ボーダーであろう。
そしてデッド・ボーダー最大の特徴は、やはり重力砲であろう。

デッド・ボーダーは、決して巨大ゾイドではない。大きさで言えばシールドライガーやディメトロドン級のゾイドでしかない。
にも関らず、ウルトラザウルスやデスザウラーを一方的に破壊してみせた。更に、共和国最強のマッドサンダーまで苦戦させている。
奇襲や数の勝利ではない。正面きって1対1で真っ向勝負をし、この成績を収めているのだ。

デッド・ボーダーほど初陣で猛威を振るったゾイドは、他に例が無い。
もちろん、初登場のゾイドは大活躍をするものだ。それは分かる。しかし、デッド・ボーダーはそれがあまりにも抜きん出ている。

いまや伝説として語られている、これら信じがたい戦果を残したデッド・ボーダーは、俗に「初号機」と呼ばれている。
戦果は他にもある。
槍を持ち、その槍を投げ空中を飛ぶサラマンダーやレイノスを撃ち落したり、ウルトラザウルスの尾を掴んで振り回したり、それはもう凄まじい。
そのインパクトたるや、「リアル路線を放棄したか?」と思える程だった。
しかし何故か、一時期を境にデッド・ボーダーの活躍はなりをひそめる。
それどころか、今度はマッドサンダーや新鋭ガンブラスター等の共和国ゾイドに次々撃破されるに転落した。

 

今回は、そんなデッド・ボーダーの性能を考えてみたいと思う。
なぜ初陣からしばらくは猛威をふるえたのか。そして、なぜ一時期を境に転落したのか。

「デッド・ボーダーの中でも、初号機だけは特別なチューンナップを受けていた」と解釈される事もあるが、どうだろう。
その説明だけで納得仕切れないと思う。
その説を採用するなら「なぜ初号機並の性能を持ったデッド・ボーダーを量産しなかったのか」という疑問に答えなければならない。

確かに、「初期生産タイプのものを高性能に」「量産タイプは生産性や整備性が高い代わりに低性能に」という兵器は存在する。
地球での例を出してみよう。
旧日本軍の「彗星」という爆撃機は、高性能を誇る反面、整備性が悪く稼働率が低かった。
そこで後期型は、エンジンを整備しやすいタイプに換装し、若干の性能低下と引き換えに高い稼働率を得た。
しかし、通常、そこまでの性能低下は出るものではない。
「彗星」にしても、スピードがやや落ちた程度で、その他はおおむね元のスペックを維持している。
あまりにも性能の陳腐化が生じるなら、それはもう別機である。

「初号機パイロットがエースだった」はどうだろう。
確かに、暗黒軍の斥候であった初号機に、エース級が乗った事は確かだろう。
しかし、初号機の活躍とそれ以降の転落ぶりは差がありすぎ、パイロットの技量だけで説明するには不十分と言わざるを得ない。

では、「高性能と引き換えに高額な機体となった為、二号機以降は安価な簡易量産型となった」はどうだろう。
しかしこの論も納得しかねるものがある。
何故なら、ゾイドの世界は常に総力戦をしている。
総力戦とはその言葉通り国家の全てを賭けた戦いであり、国の運営は戦争を中心に行われる。
もちろん戦費は天文学的にかかるが、敗北と共にくる国家滅亡を考えると、もはや勝つまでやめられないのが総力戦である。
つまり、ゾイド製造にかかる戦費などお構いなしに作られるわけで、ここで初号機並のスペックを出すのは資金的に無理だったと言う説は否定したい。

そもそも、仮に上に挙げた理由があったとしても、マッドサンダーをも倒せるスペックを有すなら、その困難を越えても量産しようとするのが自然じゃないだろうか。
ギル・ベイダーを開発せずとも勝利できそうだ。

 

では頭を切り替えて考えてみよう。
いちど「初号機は特別ではない。量産型もほぼ同等のスペックであった」と考えてみよう。
それでは、次第にマッドサンダーやガンブラスターに撃破されるようになっていった描写と矛盾が生じているようにも思える。
ただそれは「対デッド・ボーダー戦術が確立されたから」と考えてはどうだろう。
この仮定に基づいて考証してみたい。

初号機の驚異的な戦果は先に触れたが、今一度詳しく考えてみよう。
デッド・ボーダーはウルトラザウルスをその短い腕で掴み、持ち上げ、振り回した事がある。

冷静に考えればこれほど無茶な事はない。
暗黒軍ゾイドは特殊技術「ディオハリコン」を用い、ゾイドを強化している。
しかし、それで説明しきれる物ではないだろう。
ディオハリコンはディオハリコンで謎の多い物質だが、ひとますここでは「ゾイドの出力・パワーを強化する」とでもしておこう。

ディオハリコンによって、仮にデッド・ボーダーがウルトラザウルスを持ち上げられるだけのパワーを得たとしよう。
しかしそれでも、やはりデッド・ボーダーはウルトラザウルスを持ち上げる事は出来ない。
なぜなら、デッド・ボーダーの細い腕にウルトラザウルスの重量(507t)が負荷されれば、材質がどんな金属だろうが間違いなく屈して曲がる。
例えば人間に分厚い鉄板をぶち破るパワーがあったとして、そのパワーで鉄板を殴ると、鉄板が破れるより先に拳や腕の骨が砕けてしまう。
パワーがあるだけでは駄目なのだ。

では、なぜデッド・ボーダーはウルトラザウルスを持ち上げれたのだろう。
ここで怪しいと思うのが、背中に背負う「重力砲」だ。
この武器も謎が多く、具体的な解説はされていない。
その為、推測の域を出ないものになってしまうが、重力砲が使用される瞬間の写真にヒントがあると思う。

重力砲は、使用される際、このように照射対象を天高く舞い上げる事が多い。
これは、「着弾→爆発」という従来の実弾砲やビーム砲とは明らかに違う。
「重力」という言葉を用いた砲であるから、ここはやはり、重力を操る兵器だと考えるべきだろうか。

考えてみよう。
我々は地に足をつけて生きている。歩こうと思えば、その意思の通り普通に歩ける。
飛び上がったり、走ったり、転んだりする事も出来る。これら普通の行為は、我々にかかる重力が「1G」に保たれているから出来るものである。
重力が1/10の世界に行けば体が軽くなるし、10倍の世界に行けば重くなる。

ゾイド星も、当然、ゾイド星で言うところの「1G」が働いている筈だ。重力砲は、この1Gを狂わせる事が出来る兵器だと思う。
重力砲を照射すると、照射された対象は例えば「10G」の負荷がかかると考える。
当然、対象は重くなり動けなくなり、構造上脆い部分から徐々に圧壊していく。
ウルトラザウルスなら、10倍の負荷がかかった重量は507tから5070tにもなる。
ウルトラの脚部は「507tの重さを支える為の脚」なので、当然耐え切れなくなり、崩壊する。
そうして動けなくなった所を容易に破壊される。

または「0.1G」になるような照射を行えば、当然軽くなる。
そうなれば、ウルトラザウルスは507tから50.7tになり、これ位ならデッド・ボーダーでも持ち上げられるかもしれない。

そして究極には、「マイナスG」にまでコントロール出来るなら、相手を浮かせる事も可能となるだろう。
そして適度に浮かせた所から照射をやめれば、相手はその瞬間「1G」に戻り、地面に落下し叩きつけられる。
巨大ゾイドのような超重量の物体の場合、落下だけで致命的なダメージになることは容易に想像できる。
これは重ければ重いほど致命傷になり、585tもあるマッドサンダーなど、かなり危険域になりそうだ。

この構造で正しいなら、重力砲を装備している限り、初号機だろうが量産型だろうが巨大ゾイド相手に戦える試算がたつ。
また、サラマンダーやレイノスに槍を当てた件も、「重力砲を当てて動きを封じた上で」というのなら納得出来なくもないと思う。

以上、初号機と量産型でスペック的差異があまり無い説を唱たものだが、疑問も残る。
このような武器を備えるなら、なぜ以後も活躍できなかったかという事だ。
このスペックがあれば、ギル・ベイダーやガン・ギャラドなど必要なさそうにも思える。
確かにシールドライガーやハウンドソルジャーのような軽快な動きを有する相手には当て辛いだろう。
だが高速機には帝国から接収したグレートサーベルや自軍のジーク・ドーベル等を投入すれば良い。
これについても考えたい。

デッド・ボーダーが撃破された写真を見てみると、ガンブラスターが砲で仕留めたりと、その火力で沈めている場合が多い。

ここにヒントがあると思う。(ちなみにこの時ガンブラスターは、5000mの距離からデッド・ボーダーを撃っている)
ここでは「重力砲の射程が極端に短い説」を唱えたい。

おそらく、構造上、重力砲の射程は短いものと思われる。
ゾイド星の重力を作り出しているのは他ならぬゾイド星そのものだが、惑星が持つ力の前には、どんな強大なゾイドの力も無に等しい。

実弾砲は、重力の影響を受けて次第に落下する。
光学砲は重力の影響は受けないが、光の拡散によって徐々に威力を弱める。
重力砲は、おそらく、照射距離が長ければ長くなるほど、惑星の「1Gに戻そうとする力」を受けるのではないかと思う。
そしてその力はあまりにも強大なものである。

それゆえに、有効な威力を発揮しようと思うなら、格闘戦が出来そうな程の近距離にまで詰める必要があると思う。
ゾイド星には何故か、砲戦より格闘戦を好む傾向がある。
特にゴジュラスやデスザウラー、マッドサンダー等においては顕著で、それゆえに不用意にデッド・ボーダーに近づいた結果、重力砲の餌食になったのではないだろうか。
なにしろ、デッド・ボーダーはそれほど大型ではない。
格闘戦に持ち込めば、ゴジュラスでさえ容易に撃破出来そうな印象を持ってしまう。

それゆえ初戦において不覚を取ることが多かった共和国だが、次第に重力砲の射程が短い事を悟り、アウトレンジから砲で撃破する事で対処していったのではないだろうか。
砲力で対抗するなら、ガンブラスターのハイパーローリングキャノンやマッドサンダーの長射程キャノンビーム砲が最終的に優位を会得した事も納得できると思う。

おそらく、その弱点に気づかれた事が理由なのか、これ程の戦果を挙げた重力砲なのに、後の暗黒ゾイドにはあまり採用されていない。
それに代わり、フォトン粒子砲やパスルキャノンのような新機軸や、旧技術の改良の小型荷電粒子砲やハイパー荷電粒子砲を開発している。
暗黒軍が、重力砲にあまり見向きしなくなった事が伺える。
ただ、デスキャットで「超重力砲」というのは作られているが…。

デッド・ボーダー以外で唯一重力砲を装備したのはギル・ベイダーで、連装重力砲を2基、都合4門備えている。

翼の付け根付近に見える連装砲が重力砲。

廃れた筈の重力砲を備えている事は、上記した説に矛盾しているように思える。が、これは、ギル・ベイダーが飛行ゾイドであり、空戦をにらんだ配置だからこそだと思う。
陸戦ゾイドと違い、航空ゾイドは、ちょっとした機体の振動や姿勢の変化が重要なトラブルを生む。
例えばそれにより失速したりするだろうし、その回復には時間を要するだろう。

重力砲を放ち、-たとえ威力がかなり減退していたとしても-、それが当たれば、当然敵機は姿勢を崩す。
その時間は、ギルにとって獲物を仕留める格好のチャンになるのだろう。
ギル・ベイダーは、空戦時の小回りは利きにくく、運動性は低い。サラマンダーF2やオルディオスの軽快さには劣るものだ。
戦闘機というよりも、どちらかというと重爆撃機・攻撃機的な性能だから、重力砲の装備はありがたかったのだろう。

やや話が逸れてきたが、以上のようなのもが重力砲であると思う。
そして、それ故にデッド・ボーダーは初陣からしばらく猛威を振るえたものと思われ、純粋なスペックで言えば初号機も量産型も、差はあまり無いものと思う。

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