メカ生体のライバル-ランドライオン-

モノはそれ単体で完結できるのではなく、必ず他者からの影響を受けた上でその形に至っている。

シールドライガーは、サーベルタイガーという機体が存在しなかったら誕生しなかっただろう。
マッドサンダーは、デスザウラーという機体が存在しなかったら誕生しなかっただろう。

もっと言えば、グレートサーベルは、シールドライガーが存在しなかったら誕生しなかっただろう。
ギル・ベイダーもまた、マッドサンダーが存在しなかったら誕生しなかっただろう。
(対マッドサンダー用に作られた改造デスザウラーが「デスウイング」で、そのデスウイングが、ギル・ベイダー開発のきっかけとなっている)

「相手がこうしたからコチラもこうする」
モノはそれ単体で完結できるのではなく、必ず他者からの影響を受けた上でその形に至っているのだ。
「良きライバル関係」とか「相乗効果」とか言っても良いだろう。
相手に対抗する手段として、似たような機体を作るケースと、全く異なった機体を作るケースの双方があり、非常に面白い。

「コチラが何か作れば相手の作るものに影響が出る」
コチラが作ったものが駄作であれば、その影響は最小限に留まるだろう。しかし作ったものが傑作だった場合は、その影響は絶大になろう。

メカ生体ゾイド当時の資料収集に励んでいる。資料収集の際は、できるだけ、ゾイド掲載ページだけでなく、雑誌まるごと収集するようにしている。
その利点は、時代を知れる事にあると思っている。その時代の流行や思想、哲学などを知る事が出来る。
どのような時代背景の中でゾイドが展開していったのか。それを併せ考えると、よりゾイドを深く考えられると思っている。

さて、「コチラが何か作れば相手の作るものに影響が出る。傑作であればあるほど」
資料収集をしていると、これはゾイドの中だけで考えるべき話ではないと思った。
今回は、雑誌「てれびくん」を収集していて、これはゾイドと関連付けて考えると面白いのではないか…と思えるものを発見したので、紹介したい。

それは「ランドライオン」だ。


ランドライオンは、スーパー戦隊シリーズ「超獣戦隊ライブマン」に登場したメカニックだ。超獣戦隊ライブマンは、'88年2月から一年間、テレビ放送されている。
「てれびくん」は、スーパー戦隊シリーズを大プッシュしており、このような資料が非常に豊富だ。

スーパー戦隊シリーズはメインターゲットを小学生としている。放送時期・ターゲット層共にゾイドと一致する。
厳密に言えば、ややゾイドより低年齢層向けだとは思うが。

「'88年2月放映開始」という時期から考えよう。
前年、’87年7月に発売されバトルストーリーでは大活躍、販売店では売り切れ続出となったゾイドと言えば、シールドライガーだ。
時期柄、シールドライガーはランドライオンに少なからず影響を与えているのではないかと思う。

ランドライオンは、「動物をモチーフとした巨大メカである」という点で、ゾイドと一致している。
「スーパー戦隊シリーズでライオンや恐竜の巨大メカが出てくるのは定番では?」と思われるかもしれない。
確かに、恐竜戦隊ジュウレンジャーや百獣戦隊ガオレンジャー、獣拳戦隊ゲキレンジャー、獣電戦隊キョウリュウジャー・・・、
巨大な動物メカは、シリーズの多くが採用している。しかし、これらは全て、ライブマンより後のシリーズだ。
ライブマンより前のシリーズのメカは、戦車とかバイクとか戦闘機とか…。直球でメカなものばかりだった。
動物をモチーフにした巨大メカがスーパー戦隊に登場したのは、'88年2月に開始したライブマンが初なのだ。

メカ生体ゾイドは87年ごろから絶頂を向かえ、玩具屋ではかなりのスペースを占有する程になっていた。
また多くの雑誌に掲載されるようになった。
それだけ大人気だった上、その勢いまだまだ衰え知らずだったのだから、スーパー戦隊に影響を与えたとしても不思議ではないと思う。

意外にも…、と言ってしまうと失礼であるが、そのメカ造形は思いのほかリアルであり、見るべき部分が多い。

背中に二門のキャノン砲を背負っている。この配置はゾイドでよく見られる形だ。
砲のデザインは特筆モノで、シリンダーなども細かく造形されているのが素晴らしい。

脚部も、注目に値する。

脚部は、前後への可動を強く思わせるデザインになっている。反面、左右に脚を広げる事は難しいデザインにも見えるが…。
関節に「●」があるのがゾイドのキャップを思わせ、影響があったのではないかと思う。
また付け根は、後年のネオブロックスゾイドのパーツによく似ているのが面白い。


腕部付け根に注目。
ゾイドの関節のデザインは、ランドライオンに影響を与えたと思う。逆に、ネオブロックスのデザインには、ランドライオンの影響があったのだろうか。
ネオブロックスの発売は2006年で、随分時代が違うので、可能性は低いかもしれないが…。

頭部も見てみよう。

顔はゾイドより生っぽい感じになっており、他部分のメカメカしさから考えると、やや奇異に思える。
ただ、スーパー戦隊シリーズは、ゾイドとメインターゲットの年齢層を共通しているが、それでも厳密に言うとわずかに違う。
やや低年齢層向けであり、これは親しみやすさを狙ったものだろう。正しい判断だと思う。
なお頭部内にはコックピットがあり、その点はゾイドと共通している。
 
暗黒大陸編以降のゾイドはメカの作りこみが薄くなっており、スーパー戦隊メカにやや近くなっているようにも思える。この点も興味深い。

詳細なスペックは不明な部分も多いが、装甲にはアニマニウムという素材が使用されているらしく、非常に強固な防御力を発揮するようだ。

また最大速力は900km/h、ジャンプ力は100mとされている。
シールドライガーどころか、後年のエナジーライガーですら勝てるかどうか…という脅威の能力であるようだ。

ライブマン劇中では、このランドライオンが、当時としては抜群のリアルさを誇る映像で脚関節を存分に動かしながら駆け回っていた。
そのインパクトは今の3DCG時代の映像を見た後でも色あせておらず、当時の水準の高さが思われる。

ちなみに超獣戦隊ライブマンは初期おいてはメンバーが3人で構成されており(後に5人)、それぞれが専用メカを持っていた。

ジェットファルコン

同名のゾイドが後年登場しているのは偶然……だと思う。
ハヤブサがモチーフの戦闘機だ。だがジェット戦闘機に限りなく近いフォルムは、「動物をメカにした」というより「メカを動物っぽくした」と言うべき仕上がりだ。
…余談ながら、トミーも後年、「メカを動物っぽいフォルムで作る」というコンセプトで、ネンダーランドというシリーズを展開している。
可変翼を備えている事と機体上部の作りなどから、超時空要塞マクロスのVF-1バルキリーの影響が非常に強いように見える。
なお、ガウォーク形態になる事も出来たりする。

アクアドルフィン

イルカがモチーフの潜水艦メカで、海空両用メカだ。空飛ぶ海洋生物は、シンカーを連想させる。
モチーフは2頭のイルカで、複数をモチーフにしているのは面白い。分離し単独で行動できるかは不明。
ランドライオンは「動物をメカに仕立てた」、ジェットファルコンは「メカを動物っぽく仕上げた」であると思う。
そして、アクアドルフィンは両者の中間のようなデザインになっていると思う。

なおこれらは、スーパー戦隊のお約束に則り、合体して巨大ロボになる。

ここまでくるとゾイドとは全く違うものになっている。しかしランドライオンに関しては、ゾイドと照らし合わせて考えても、なかなか面白いのではないだろうか。

ランドライオンに関してもう少し深く。
ゾイドっぽい内部図解もあったりする。

リアルさを感じさせてくれる、非常に素晴らしい仕上がりだ。

またコミカライズも行われており、漫画家おちよしひこ先生により執筆されていた。

ストーリーは、シリアスだったテレビ版に対し、低年齢向きにわかりやすくアレンジされている。
残念ながら単行本にはなっていない。

おちよしひこ先生と言えば、史上初のゾイド漫画、「ゾイド創世記」を執筆された方でもある。

奇妙な偶然を感じさせる、なかなか面白い事実だと思う。

ゾイドと同時期に出た動物型メカという事で、注目すべき部分が非常に多いメカだと思う。

「コチラが何か作れば相手の作るものに影響が出る。傑作であればあるほど」
それはゾイドの中でももちろん起こる。しかしゾイド以外のものを併せて、初めて見えてくるものもある。

「その時代」という単位で研究すると様々なものが見えてくる。
資料収集の醍醐味は、ここにもある。

ともかく、ランドライオン。同じ時代を生きた戦友と書いてライバルと呼ぶ的なメカとして、調べてみると非常に興味深いメカニックだと思う。

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