最強の矛

荷電粒子砲、それはEPZ-06デスザウラーが初めて搭載した火器であり、ゾイドの世界を語る上で外せぬ兵器として君臨している。
その絶大なインパクトは並ぶものがなく、強力兵器の代表と言って良いだろう。


しかし、冷静に考えるとデスザウラーの荷電粒子砲は決して最強の矛というわけではない。
というか、デスザウラーはメカ生体ゾイドにおいて中期に登場したゾイドなのだから、それは当然かもしれない。
特に、暗黒軍参入以降は強力な新兵器に押され始めたように思う。

デッド・ボーダーは、マッドサンダーを大苦戦させる強さを見せた。
ガン・ギャラドはハイパー荷電粒子砲を備えており、威力の程は不明だが名称から察するとデスザウラー以上という可能性も感じる。

他にも、ギル・ベイダーのビームスマッシャー、デス・キャットの超重力砲、キングゴジュラスのスーパーガトリングキャノン等も、威力では確実に上を行くだろう。
ビームスマッシャーに関してはある意味荷電粒子砲なのだが…。

※ビームスマッシャー
 空気中から荷電粒子を吸収しそれを発射する荷電粒子砲の一種。
 デスザウラーは荷電粒子を拡散させながら撃つのに対し、ビームスマッシャーは円盤状に整形して撃つ。
 それゆえ、広範囲を面として制圧できるデスザウラーの荷電粒子砲に対し、ビームスマッシャーは攻撃範囲が狭い。しかし貫通力は飛躍的に高まっている。
 おそらく形状から判断するに出力自体はデスザウラーのものの方が大であると思えるが、にもかかわらずキングゴジュラスをも切り裂く威力を持っているのはその為。
 学年誌のバトルでは、マッドサンダーのマグネーザーにぶつけて折った事もある。

オルディオスのグレートバスターも同程度以上の威力ではないだろうか。
この砲は、デスザウラーを一撃で沈めた事がある。

以上、冷静に考えるとデスザウラーの荷電粒子砲は最強の矛ではない。
しかし、それでも言いたい。
それでもデスザウラーの荷電粒子砲は最強の矛である、と。

それはその描き方によるところが大きいと思う。

初陣でいきなり使用された荷電粒子砲の犠牲となったのはプテラス編隊で、直撃を受けたプテラスはその存在をただの溶けた金属に変えた。
その姿は異様で、それまでの「穴が開く」程度だったビーム砲とは明らかに異質で、「引きちぎられる」ような格闘兵器によるダメージとも違っていた。
ほとんど原型を留めぬその姿は一言で言うと「不気味」なものを感じさせた。

なお、この場面の描写にあるのはプテラスの残骸のみであり、あえて荷電粒子砲を発射する瞬間が描かれていない所は注目すべきと思う。
その後、荷電粒子砲を地中に向けて撃ち穴を開けて危険地帯を脱出する描写もあったが、これは文章のみの表現に留まった。

この後、荷電粒子砲の描写はしばらくなりを潜める。
宿敵のウルトラザウルスとの対決でも、それを制したのは格闘能力だった。
むしろ火器を使用したのはウルトラザウルスの方で、至近距離からの36cmウルトラキャノン砲をデスザウラーは弾き返している。
この頃のデスザウラーは、荷電粒子砲は積極的にアピールされていたものの、どちらかというと格闘力を活かした戦いをしていたと思う。
それは、ウルトラザウルスとの対決の直前に行われたゴジュラス駐屯地での決戦の様子からも明らかだろう。
ゴジュラス大部隊を相手にした戦いで、デスザウラーはほぼ格闘戦のみでこれを壊滅させている。

次いで荷電粒子砲が使用されたのは、ウルトラザウルス、サラマンダーを迎撃した時だった。
飛行するサラマンダーを荷電粒子砲で撃ち落しているのと、後方に布陣するウルトラザウルスに向け“おどし”の一発を放ってこれを退却させている。

意外にも、ここまでは荷電粒子砲の圧倒的威力を扱った描写は少ないが、次の戦闘で強烈な描き方をされる。

2機のゾイドゴジュラスMK-2による長距離キャノン砲の砲撃に耐え、格闘戦でこれを一方的に倒している。
その上、海上を航行するウルトラザウルス一機を含む共和国艦隊に向けて荷電粒子砲を発射し、共和国艦隊を葬り去っている。
この時、はじめてオーロラインテークファンを回転させ荷電粒子を吸入するシーンから発射までのプロセスが精密に描かれている。

しかし、この荷電粒子砲は直撃しなかった。敵に"かすった”程度だったのだ。
にもかかわらず、その威力は文字通り海を割り、バリゲーターは天に舞い上がり、ウルトラザウルスさえも半身を失って戦闘不能となっている。


かすっただけで共和国最強ゾイドを戦闘不能にするその描写はインパクト抜群のものだった。

荷電粒子砲が最もインパクトを残した最強の矛として在れるのは、この描き方ゆえのものだと思う。
要は“引っ張り方”が上手いのだと思う。

描き方をまとめると、
正体不明の巨大なゾイドが現れ、それはプテラスをドロドロに熔かすほどの高威力の砲を持つが、そのプロセスは描いていない。
むしろ、この頃は絶大な格闘能力を印象付けるような描写をしている。

未知の不気味な兵器の存在を匂わしながら、しかしそれとは別の強さを描く。それは、「これだけ強いのにまだ切り札がある…」と思わせる。
具体的な描写を含めて荷電粒子砲を撃ったのはサラマンダーに対してが初だが、一撃でサラマンダーを完全破壊している。
そしてここで、「これこそが荷電粒子砲の威力か!」と思わせておきながら、次の戦いでそんな程度ではない真の威力を存分に開放し、その圧倒的破壊力を見せ付けている。

何にしろ強大な何かは絶大なインパクトを放つし、集客という意味では素晴らしい効果を生むものと思う。しかしその反面、飽きもきやすいものとも思う。
また、いわゆるインフレも起こしやすいのだと思う。
だからこそデスザウラーはあえて、初期において荷電粒子砲を抑えながら使ったのではないかと思う。

デスザウラーには未知の切り札がある。
それを確実に伝えながら、しかし具体的にはなかなか描かない。
それはユーザーの想像力をかき立てもする。
ユーザーの想像は…、おそらく苦労して自分で思い描いたものだから、そう簡単に離れるものではないと思う。
そして最後には、ユーザーの想像をはるかに超えるスケールでその威力を見せ付けている。

先に、デスザウラーの荷電粒子砲以上の威力を持つ矛を幾つか挙げた。
それらが何ゆえ、荷電粒子砲以上の威力を有しながら最強の矛足り得なかったかは、その描き方ゆえだと思う。
彼らはがっついて初陣から自慢の武器を見せ付けすぎた。

以上のように思うからこそ、私の中で荷電粒子砲は最強の矛として今でも君臨しているのである。

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