荷電粒子砲とオーロラインテークファン

ZAC2044年、デスザウラーを先頭にした帝国軍は、共和国軍最強のウルトラザウルスを破った。雪崩のように共和国首都へ侵攻し、その地を支配下とした。
以後、共和国軍は各地で絶望的なゲリラ戦を展開する事になる。

私がゾイドを知ったのはそんな頃でした。
だから共和国派の私にとって、デスザウラーという存在は強大で絶望的な壁になっていました。

デスザウラー。
あらゆる面で我が軍のゴジュラスを大きく上回る。
絶大な格闘力はゴジュラスを赤子のように投げ飛ばす。また、いかなる攻撃にも耐える超重装甲を持つ。
更には空前絶後の大威力を持つ「荷電粒子砲」を持つ。

・ゴジュラスが包囲しても相手にならない程の格闘能力
・ウルトラキャノン砲の直撃に耐える超重装甲
・荷電粒子砲は、かすっただけでもウルトラザウルス級ゾイドが戦闘不能になる

マトモに渡り合えるゾイドは皆無。

「こいつを敵に回さなくて良かった……」とは帝国の精鋭スケルトン部隊隊員の言葉ですが、当時の私はデスザウラーを敵に回していたのでした。

だからといって戦わぬ訳にはいきませんでした。
共和国派は、デスザウラーを正面から倒せるゾイドを欲しながら、それが無い今、手持ち部隊で対抗するしかなかったのです。

方法がないわけではありません。
無敵のデスザウラーにも弱点が2つあります。
「荷電粒子砲エネルギー消費が多いので一度の出撃では2~3発程度しか撃てない事」「オーロラインテークファンを撃ち抜くと大幅にパワーダウンする事」
それをいかに攻略するかが共和国派にとっての使命でした。

容易でない事は言うまでもないでしょう。
荷電粒子砲は2~3発しか撃てない。とはいえ、かすっただけでアウト。
しかも発射後は扇状に広範囲に広がる。全て空撃ちさせるのは至難……。

可能だとすればシールドライガー位でしょうか……。
だが、空撃ちさせたところで強大な格闘力が残っています。
シールドライガーでは相手にならない。
荷電粒子砲を封じたとしても、我が軍に確実にデスザウラーを倒せるゾイドは居ませんでした。

となると、やはり荷電粒子砲も格闘力も同時に奪えるインテークファンへの攻撃が一番良い。
しかしそれも困難を極めました。
飛行ゾイドではミサイルやビーム砲の餌食になるだろうし、地上ゾイドで接近しようものなら尾の一撃で倒されてしまう……。
遠距離から砲撃で撃ち抜くのがベストではあるでしょう。しかし機動性の高いデスザウラーを補足しきれるか……。

しかし1%の可能性にかけ、果敢に挑み続けていました。

当時、本当にゾイド少年でした。
それはデザインやキットの造形の良さに惹かれたのだと思います。
しかしそれに加えて、可能性を感じさせてくれる設定が好きだったのだと強く思います。
空想の中で激しいバトルを繰り広げ、屈辱の敗北を味わい、時に勝利の味を知りました。
思うに、ゾイドが特に優れているのは、可能性を感じさせてくれる部分ではないかと思います。

多くの人型ロボットモノは、人型ゆえに大まかな形状や大きさが統一されている。
対してゾイドは多種多様な形と大きさで戦う。だから複雑さが凄い。
(もちろん、人型ロボットモノのファンから言わせれば、別の論も出てくるとは思う)

そうした意味で、戦法で一発逆転を狙える。そう感じさせてくれる所に想像力が強く刺激される。
可能性を感じます。

可能性。
それは自分が持っているゾイドより強い設定のゾイドがリリースされても、何とかして対抗しようという戦術になります。
また同時に、最新最強のゾイドを手に入れても、常に防御を考えねばならず油断できない事でもあります。

デスザウラーを超えるゾイド、マッドサンダーもまた、背中にウィークポイントを持っていました。
今にして思えば、デスザウラーにしろマッドサンダーにしろ、そんなものは防弾板の一つでも増設すれば解決してしまう。
しかしそうしなかった所にトミーのこだわりを感じます。

また最強でなくとも、一芸に秀でたゾイドが存在した事も大きな魅力だったと思います。
・戦闘は困難だが電子戦では右に出るものが居ないディメトロドン
・レッドホーンにすら遅れをとる戦闘力でありながら、寒冷地用に改造して地の利を生かせばデスザウラーと五分に渡り合えるゾイドマンモス。
・強固な防御力だけを頼りに戦場を駆け回るグスタフ。

これらのゾイドをどこに配置すれば効果的かを考えるのもまた面白い想像でした。

 

ゾイドは暗黒軍の参戦以降、それまでの勢いを失い……、そして衰退していきます。
テレビゲームとかミニ四駆とか、強力なライバルが登場したからという意見を聞きます。
それも確かに大きな要因ではあったでしょう。
しかしファミコンは1983年発売だし、ミニ四駆は1982年から展開しています。
全盛期のゾイドはそれらと共存していました。

思うに、暗黒軍参入以降のゾイドには、それまでのような魅力的な弱点が存在しなかった。
あるにしても分かりにくかった。その事は、少年の熱を冷ます重要な原因になったのではないかと思います。

未知の重力砲を備えたデッドボーダーは弱点らしい弱点は設定されていません。
いや、一応パイプ類が弱点とされていますが、どうもそれ以前のゾイドに比べて魅力的な弱点とは言いがたいと思います。

暗黒軍最強ゾイド、ギル・ベイダーにも弱点はありません。

一応、ウルトラザウルスと同一構造のキャノピーを持つので、そこが弱点と言えない事もありません。ただ、飛行ゾイドにおいて果たしてそれが弱点となるのか……。
「旋回半径が大きいので空戦に不向き」という設定も一応ありますが、ほとんどの陸上ゾイドにとってはあまり意味をなりません。
というか、空戦に不向きとされているその実、ギル・ベイダーは何度もサラマンダーや同F2を倒しています。

私は大好きなマッドサンダーではギルを倒せないと知って、ひどくがっかりしたのを覚えています。

 

ハウンドソルジャーとジーク・ドーベルのようなライバルゾイドも存在しました。
しかしそこに、「バランスで勝るサーベル」「スピードで優れるシールド」のような駆け引きはありませんでした。

子供は正直なもので、実に飽きやすい。
80年代におけるゾイドが、かくも長期間にわたって勢いを失わなかった事は、ヒーローを出しつつ、古いゾイドにも輝ける余地を必ず残していた事が要因ではないだろうかと思ってしまいます。

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